ふじのくにCNFフォーラム

セルロースナノファイバーの世界的拠点を目指す静岡県

オープンイノベーションへの取り組み

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セルロースナノファイバー(CNF)は木材などから得られるセルロース繊維をナノサイズまで微細化した繊維状の新素材である。軽量、高強度や寸法安定性といった特徴を持つことで知られる。また、振ったりかき混ぜたりすると粘度が低下する性質(チキソ性)や、植物由来のため安全で環境負荷が低く、環境にやさしいことなどから、自動車用部品や、化粧品、食品といった様々な分野で製品開発や実用化が進められている(表1)。

特性 用途 製品化の可能性
比表面積が大きい ろ過・吸着・分離剤 ・抗菌消臭紙オムツ
・特殊フィルター
ガスバリア性が高い 高気密シート ・食品包装用フィルム
超極細の繊維 透明材料 ・透明太陽電池
・ディスプレイ材料
熱による寸法変化が少ない 電子部材 ・セパレーター
・太陽光発電パネル
水中で特徴的な粘性を示す 増粘剤 ・塗料
・化粧品・食品
軽くて強い プラスチック等強化樹脂 ・自動車
・建材
・家電
・医療部材
・日用品・文具

表1●CNFの多彩な用途

静岡県では明治時代以降、豊富な水資源が注目され、富士市を中心として製紙産業が栄えてきた。この地域特性を活かし、静岡県では同じく木材を原料とするCNF関連産業の創出と集積を図っており、平成27年6月に産学官連携による「ふじのくにCNFフォーラム」を全国に先駆けて設立し、研究開発の強化、CNFを活用した製品開発の支援、製造拠点の形成を三本柱とした「ふじのくにCNFプロジェクト」に取り組んでいる。

研究開発の強化に関しては、富士工業技術支援センターを本県CNF関連産業の中核的支援機関と位置づけ、CNF関連機器を整備し、CNFに関する研究開発や企業への技術支援を行っている(表2図1)。さらに平成29年度には、静岡大学農学部に「ふじのくにCNF寄附講座」を開設し、化学メーカー出身の青木憲治氏を特任教授として招聘、CNFの研究開発と人材育成を進めている。

用途 機器名称
機械的解繊CNFの作製 ・遊星型ボールミル
・湿式微粒化装置
化学的解繊CNFの作製 ・自動滴下装置
・超音波ホモジナイザー
CNFの評価 ・B型粘度計(粘度測定)
・原子間力顕微鏡(CNFの観察)
・液中分散安定性評価装置(CNFの分散評価)
・紫外可視近赤外分光光度計(CNFの分散評価)
CNF利用製品の評価 ・マイクロX線CT(樹脂中等のCNFの分散性評価)
・2軸混練押出機(CNFと樹脂の複合材作製)
・水蒸気・ガス透過性試験機 (CNFフィルム等のガス透過性の評価)

表2●富士工業技術支援センターに整備されている主なCNF関連機器

図1●富士工業技術支援センター及び研究風景

図1●富士工業技術支援センター及び研究風景

また、令和元年度には、富士工業技術支援センター内に「ふじのくにCNF研究開発センター」を開設した。同センターには、「静岡大学CNFサテライトオフィス」、企業が入居する「CNFラボ」(3室)を設置し、365日24時間使用できる環境の中で産学官による研究開発を進めている。

次に、CNFを活用した製品開発の支援では、3名のCNFコーディネーターによるマッチング支援や技術相談を県内企業に対して行っているほか、セミナーや展示会を開催している。「ふじのくにCNF総合展示会」では、県内外から数多くのCNF関連企業、大学や研究機関等が出展し、来場者とのビジネスマッチングの場を提供している。

三点目の製造拠点の形成については、大学や研究機関、企業などCNF関連の拠点の誘致を進めている。平成29年度には、東京都内にあった日本製紙のCNF研究所が富士市に移設した。また、同社の富士工場にはCNF強化樹脂の実証生産設備も設置され、県内で生産が開始された。

このようなCNFに関する取組を総合的に推進することにより、静岡県はCNFの世界的な拠点となることを目指している。

セルロースナノファイバーを活用した商品や事業を展開する静岡県内の企業・事業所については、次報にて紹介する。

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