永久磁石と電磁石を直列に組み合わせたタンデム型構造で出力電圧一定
開発したエンジン駆動小型発電機には小型高出力化するための工夫が施されている(図3)。例えば、磁力が強いネオジウム磁石を使う、磁極の数を増やす、回転数を上げる等の工夫である。それによって重量が150kgだった発電機を18kgまで小型軽量化できた。加えて発売当初2.5KVAだった出力容量も15KVAに高められた。
自動車エンジンを発電機のロータの駆動力として使うため、新たな技術も開発した。「自動車エンジンは走行速度に応じて回転数が変化する。エンジンの回転数が変化しても、発電機は一定の出力電圧を維持することが必要だ」と、開発責任者の東洋電産取締役土屋直義氏は言う。そのために同社の小型発電機は永久磁石と電磁石を直列に組み合わせたタンデム型の構造を採用している。この構造を採用することによって、出力電圧が所定の電圧値より低下した場合、電磁石の界磁コイルに永久磁石の磁束と同方向の磁束を発生させる電流を流すことが可能になる。逆に出力電圧が所定の電圧値を超えた場合には、電磁石の界磁コイルに永久磁石の磁束と逆方向の磁束を発生させる電流も流すことができる。こうした制御技術を開発した結果、交流電圧を200Vで安定させることができた。なお交流電圧は整流されて280Vの直流電圧に変換され、電荷がリチウムイオン電池に蓄えられる。
現在同社には、用途に応じて出力容量が2.5KVAから15KVAまで七つの発電機(用途に応じた構造のもの)が用意されている。さらに構成によっては東芝製リチウムイオン電池を付帯させることもできる。価格は80万円~1000万円と仕様によって大きく違う。
図3●HMG発電機の構造
今後とも地道に市場を開拓していく
東洋電産の次の開発ターゲットは、アイドリングストップ対応だ。商用車ではアイドルストップの時間が長く、その際に従来の車載用エアコンではエンジン停止中は対応が出来ない。これをどう動かし続けるかが課題だと取締役の土屋氏は言う。そのため電動エアコンの導入を検討しているが、エアコンを駆動させるには、エアコンの制御フローを一つ一つ解析し、車両と電動エアコンの整合が必要になる。
車がインテリジェント化しているが、自動車メーカーはその制御情報を開示していない。アイドルストップ時に搭載したバッテリーでエアコンを駆動させるには、エアコンの制御フローを一つ一つ解析し、車両と電動エアコンの制御装置との間で整合をとることが必要になる。
エンジン駆動型発電機搭載車輛は、大手企業が手を出し難いニッチな市場である。しかも競合企業は存在しないという。社長の杉村光一郎氏は「一つひとつの市場は小さいが、安定した市場である」と重要性を強調する。同氏は、今後とも地道に市場を開拓していく考えだ。