東洋電産

EV時代を先取りした電気の宅配車を開発

企業紹介

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アルミダイカスト製品と電気機器を製造する静岡県の中堅企業東洋電産は、エンジンで駆動する小型「HMG発電機」搭載のトラックを改造・開発した(図1、2)。同トラックには11kAhのリチウムイオン電池とCHAdeMO対応の急速充電器が搭載されており、トラックからEVの蓄電池に直接充電することができる。将来EVが普及したとき、ガス欠ならぬ電欠が多発する恐れがある。今回開発したトラックはEV時代を先取りしたユニークな製品と言えよう。もちろんEVの充電用途以外にも活用できる。同社では今回開発したエンジン駆動小型発電機搭載車輛を通称「電気の宅配車」と呼んでいる。

東洋電産がエンジン駆動発電機搭載車輛を開発したのは今回が初めてではない。実は開発がスタートしたのは30年以上前である。「先代社長の杉村守彦氏が東海地震発生時の停電を想定し、家2軒分の電力を供給できる発電機を開発することを目標にプロジェクトをスタートさせた。車のエンジンに注目した理由は、災害時でも動作可能な車のエンジンを車輛走行以外にも使おうという発想だった」と、同社取締役社長の杉村光一郎氏はプロジェクト・スタート当時を振り返る。電気の宅配車はまさに静岡県という地理的な特殊性と企業としての社会的使命が生んだ製品と言えよう。幸い東海地震はまだ発生していない。しかし、2011年には東日本大震災が発生している。そのとき地震の影響で被災地への電力供給は途絶えた。明かりもない寒い夜空の下、たき火を囲んで暖を取る被災者の映像は記憶に新しい。まさに杉村守彦氏が対応を想定していた状況がそこにはあった。

図1●エンジン駆動の「HMG発電機」搭載車輛/図2●トラックのエンジンと連動したHMG発電機搭載の「電気の宅配車」

事業が立ち上がるキッカケはオウム真理教事件

東洋電産はこれまで2500台以上のエンジン駆動発電機搭載車輛を販売してきた。現在、主要な顧客は放送局である。それは同事業が立ち上がったキッカケと大きく関係している。そのキッカケとは1995年にオウム真理教が起こした地下鉄サリン事件である。

地下鉄サリン事件発生後、警察は上九一色村にあったオウム真理教教団本部施設を捜査する。テレビ局各社はその状況を連日放送した。その当時、放送用中継車の電源に使われていたのは一般的な発動発電機だった。各社は発動発電機を連日連夜稼働させ、事件を放送した。このため上九一色村の村民から発動発電機の騒音や排煙に対する苦情が各局に殺到した。すでに東洋電産のエンジン駆動発電機搭載車輛を試験導入していたある放送局から、こうした苦情対策として中継車にエンジン駆動発電機を本格的に搭載したいという要望が東洋電産に寄せられた。オウム事件を契機にその放送局は、地方局を含めたほとんどの小型中継車に同社の発電機を搭載した。

放送局1社で実績ができた結果、他の放送局も中継車に同社の発電機を一斉に採用した。現在、全台数の30%程度が放送用中継車である。最新の中継車はさらに進化している。2kWh~4.4kWhの蓄電池を搭載し、走行中に充電した蓄電池から電源を供給して放送機材を動かすようになっている。

用途別で次に多いのが消防車である。全体の15%程度だ。火災時の夜間照明用電源に使われる。このほか、災害時の派遣車輛にも東洋電産の小型発電機が搭載され始めた。国土交通省や警察庁、地方自治体は災害時に被災地の状況を把握するため自前の撮影車輛を派遣するようになっている。テレビ局の中継車と同様、衛星通信を使って災害時の司令部に撮影された画像を送信する。その際の電源として同社の小型発電機が使用されている。

東洋電産(株) 「NMG車載発電装置の販路拡大と今後の展望」

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