「農食健科学・産業イノベーションセンター」を新しい付加価値を持つ農作物や食品を生み出すプラットフォームに
プロジェクトの推進拠点となる「農食健科学・産業イノベーションセンター」は、沼津市西野にある東海大学沼津キャンパスの旧施設に設置される。土地の総面積は約24万m2で、第一期の施設の総面積は9720m2。2017年の開所時は5階ある建物の1~2階に次世代栽培システム研究室や管理運営ゾーン、研究開発・多目的ゾーンを設ける(図1)。
この拠点は単なる研究開発拠点に留まらず、オープンイノベーションの産業振興拠点となる。拠点には、企業や農業法人などの民間事業者等へ貸し出す研究室や共用の高度な分析機器を設置する。そして静岡県はこの拠点を、プロジェクトに参加する事業者や県内外の支援研究機関が、それぞれの技術力、開発力、アイデアを持ち寄ることで新しい付加価値を持つ農作物を生み出すプラットフォーム(図2)にすることを目指す。
静岡県は、2016年9月先端農業推進プロジェクトにおける研究テーマを公募した。同プロジェクトへの参加形態は五つある。①「農食健科学・産業イノベーションセンター」へ入居し、単独または共同研究を実施する入居、研究型、②共同研究テーマに参画し、センター内外の研究機関、研究者、企業とともに共同研究を行う共同研究参加型、③事業中または事業化予定の植物の高付加価値化のための研究開発(栽培レシピの作成、環境制御システムの高度化など)をセンターのプロジェクトチームに依頼する研究開発依頼型、④事業化・商品化を検討中のプロジェクトに対し、資金・ノウハウ等を提供するプロジェクト支援型、⑤教育および人材を育成する教育・人材育成型である。
静岡県では高品質な農芸品とも言える農産物が多く生産されている、果物では全国で初めて機能性表示食品として認定された三ヶ日みかん、二十年以上にわたりお茶の輸出に取り組み農林水産祭天皇杯を受賞した茶の農業生産法人など、静岡県の農業は商品力、販売力に強みがある。静岡県は農業を成長産業と位置づけ、既存の農業の強みを生かしつつ、同県が得意とする製造業のモノづくり技術や研究者ネットワークを活用した最先端の科学技術を取り込み、農業・食品・健康一体型の科学技術・産業における日本の拠点、世界の拠点を目指してプロジェクトを推進している。今後の進展が期待される。