AOI-PARC

オープンイノベーションにより新しい価値を創造する拠点 静岡県先端農業プロジェクト拠点「AOI-PARC」

オープンイノベーションへの取り組み

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「農食健、農商工、産学官金連携を推進し、オープンイノベーションによって農業に新しい価値を生み出す」。(AOI機構専務理事兼事務局長の岩城徹雄氏)こうした目標を掲げる静岡県先端農業プロジェクト(AOIプロジェクト)の拠点「AOI-PARC(Agri Open Innovation Practical and Applied Research Center)」(図1)が始動した。AOI-PARCは沼津市の東海大学跡地・建物を活用し、2017年8月に開設された施設である。同センターには、温度、湿度、光の量・質、CO2濃度を制御することで環境条件を30万通り以上設定できる栽培装置が設置されている(図2)。学術・研究機関として、すでに作物の機能性向上技術などを研究する静岡県農林技術研究所次世代栽培センター、ICTを農業に展開する慶應義塾大学SFC研究所AOIラボ、光技術を活用した作物状態の精密計測などを研究する理化学研究所の研究員が入居しており、研究開発やビジネス支援を行う9社・1大学の入居も決まっている。「AOIプロジェクトは、研究機関や企業が相互に連携することによって、製造業の先端科学技術やICTを農業に応用し、革新的な栽培技術を開発することで農業の生産性を飛躍的に高めることと、それをもとに新しいビジネスを創出することを目指す」と岩城氏は語る。

  • 図1●先端農業プロジェクトの拠点「AOI-PARC」

    図1●先端農業プロジェクトの拠点「AOI-PARC」

  • 図2●30万通りの環境条件を設定できるパラメータフル制御式栽培装置

    図2●30万通りの環境条件を設定できる
    パラメータフル制御式栽培装置

静岡県の場の力を活かして農業でオープンイノベーション

日本の農業は、高齢化・担い手不足に伴う就農人口の減少や、耕作放棄地の拡大、食料自給率の低下、食のグローバル化といった厳しい状況に直面している。その一方でこうした状況を打開すべく、農業への参入障壁を下げる規制緩和や、地方創生による農業育成策、農業のICT化などによる改革が進められている。これらは農業に新たな技術を取り込み、農業を衰退産業から成長産業へ転換させる動きと言える。

静岡県の農業産出額は1990年に3260億円あったが、2015年には2204億円と32%も減少した。これがAOIプロジェクトを開始する一つのキッカケとなった。静岡県は自動車産業をはじめとしてものづくりが活発な地域である。加えて健康医療関連の産業や研究機能も集積しており、これまでに同県は世界レベルの高度医療・技術開発を目指す「ファルマバレーセンター」や、地元産の農林水産物を活用した新商品の開発と販路開拓を目的とする「フーズ・サイエンスセンター」を開設してきた。こうした静岡県の場の力を活かし、農業のオープンイノベーションを実現するAOIプロジェクトをスタートさせた。その究極の目標は「世界の健康寿命の延伸と幸せの増深」の貢献にある。

写真●プロジェクトを推進するAOI機構専務理事兼事務局長の岩城徹雄氏(左)と静岡県経済産業部農業局農業戦略課先端農業推進室長の平松久典氏(右)

「農業の生産性革新によって、美味しいもの、安心・安全なもの(高品質化)、体にいい成分を豊富に含むもの(高機能化)、短期間でたくさんとれるもの(高収量化)、安いもの(低コスト化)を実現する。出来た作物は農家の所得を向上させ、静岡県の農業産出額を増加させる。消費者は美味しいもの、体にいいものを食べることによって健康になる。開発したものを流通、加工することで関連産業も活性化する。AOIプロジェクトは大きな広がりを持つ地方創生プロジェクトと言うことができる」(岩城氏)

もともと静岡県は、お茶、みかんといった機能性が高いといわれている農作物の生産が活発である。同県は消費者の健康指向の高まりを背景に機能性食品の開発にも力を入れてきた。その結果、消費者庁から、三ヶ日みかんが生鮮食品として最初の機能性表示食品に認められた。しかし、「静岡では北海道のような農作物の大量生産は難しい。プロジェクトではお茶やみかんに次ぐ機能性の高い付加価値のある野菜を売りにしていくこととなった」と、AOIプロジェクトを推進する静岡県経済産業部農業局農業戦略課先端農業推進室長の平松久典氏は説明する。

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