開発の発端は入居企業からの相談
深澤電工代表取締役社長 深澤好正氏
開発の発端は、「歯科医師から提案を受けたヤザキ工業からの相談」(深澤氏)。医療機器分野に本格的に参入するためファルマバレーセンターに入居し、開発テーマを模索しているタイミングだった。「すぐに大手メーカー出身のシニア技術者を中心に社内チームを立ち上げ、システム開発・設計に着手。ヤザキ工業の金型技術と3Dプリンターのノウハウを持つハヤブサの技術を活用し、試作を繰り返した。両社ともファルマバレーセンターに入居しているのでスムーズに開発を加速できた」(深澤氏)。
試作品は、静岡がんセンターの口腔外科医や歯科医師と意見交換しながら改良を進めた。「プローブの細さや形状、脱着のしやすさ、挿入角度などユーザーならではの視点で様々なアドバイスを得られた。それらを1つ1つ形にすることで完成度を高めた」(深澤氏)。同社は、2017年12月に医療機器製造販売業(第二種)の許可を取得した。地域企業間の連携による医療機器等の製品化を支援するファルマバレーセンターの「医療機器等開発助成事業費補助金」を活用し、さらに改良を進め、登録認証機関からの認証を経て2018年度中の上市を目指す。
医療機器メーカーとしての体制構築を支援
ファルマバレーセンターの地域連携コーディネータ関口守氏は、「医療機器を製造し認証を得るには、製造管理や品質管理基準への対応(QMS体制)、組織体制の整備など膨大な手続きが必要。実地調査では適正な品質の製品が製造されるかどうか製造方法や管理体制等を厳しく問われる。深澤電工は技術力に加え、企業文化として5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)が根付いている。それが短期間での医療機器の開発と製造販売業許可の取得につながった」と評価する。
前述のヤザキ工業は睡眠時無呼吸症候群や嚥下障害の改善等に使用する医療用マウスピース、ハヤブサは静岡がんセンターと「ドレーンサポート」と呼ばれる、手術後に患者の体内にたまった胸水や腹水を排出するドレーンカテーテルを固定する器具を開発。医療機器製造販売業の許可を取得している。
関口氏は、「異業種からの参入では、医療機器製造販売業の許可取得が医療機器メーカーとして信頼性や実績の向上につながる。ファルマバレーセンターでは、許可に必要な試験データの取得や社内組織の整備、薬機法への対応などを支援している。技術力だけでなく、こうした体制の充実が事業強化につながる」と話す。