システック

完全マーケットイン型コンサルティング製造事業を展開~「下請けから脱却する手段の一つとして、これほどよいビジネスモデルはない」(2)

企業紹介

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完全マーケットイン型コンサルティング製造事業の初製品はマスコット玩具から誕生

システックが自社製品を開始するキッカケは1990年代のバブル崩壊だった。その当時、電機メーカーからの受託製造が激減し、梶村氏は下請け事業からどう自立するかを考えていた。そして導き出した一つの結論が自社製品の開発・販売だった。しかしそう簡単に自社製品の開発に成功したわけではない。

「自社製品を開発しようと異業種交流会にも参加した。最初はみんなで試行錯誤を続けるものの、長続きはしなかった」と梶村氏は当時を振り返る。その一方でプロダクトアウト型の自社製品の開発にも注力した。しかし、成功したと言える製品は必ずしも出てこなかった。そんな中、自社製品の開発に道を切り開いたのが、温度によって色が変わる塩化ビニール製マスコット玩具だった。

トヨタ自動車の工場の運営部隊への技術提案を繰り返していた時のことだった。社員が偶然持ち込んだマスコット玩具が担当者の関心を惹いた。自動車工場では配電盤のネジが緩むと発熱し、火災の原因となる恐れがあった。その担当者は、マスコットに使われている塩化ビニール製樹脂を使って配電盤のネジにかぶせるキャップを作れば、配電盤の発熱状況をモニターでき、事故を未然に防止できると考えた。そこから完全マーケットイン型コンサルティング製造事業の最初の製品「サーモキャップ」が誕生した(図1)。2002年頃の話である。現在、同製品は商社を通して多くの企業に販売されており、「会社の売上に貢献している」(坂田氏)。

図1 完全マーケットイン型コンサルティング製造事業の最初の製品「サーモキャップ」

図1●完全マーケットイン型コンサルティング製造事業の最初の製品「サーモキャップ」
サーモキャップを配電盤のネジにかぶせることで、ネジが発熱した場合、サーモキャップの色が赤から白に変化する。

トヨタ自動車との共同開発に成功した梶村氏はその後、同ビジネスを他分野の企業に展開した。例えば医療分野である。システックは静岡県内の市立総合病院と月に一回の定期ミーティングを開催し、相手の課題・困り事を解決する新製品の提案を行っている。また、中日本高速道路(NEXCO中日本)とも同種のミーティングを開催し、ある製品の共同開発に結び付けている。最近では農業分野にも進出した。「自動車分野、医療分野、インフラ分野、農業分野。人に話すと、手を広げ過ぎとみられることも多い。しかし、技術ベースは一つだ。システックがこれまで培ってきた電子技術である」と同氏は語る。

梶村氏が自社の製品開発に力を入れる背景には、派遣事業で技術を蓄積してきた技術者の活用といった同氏の強い思いがある。「技術者派遣は人材育成、人材確保につながる。決して技術者の使い捨てではない。完全マーケットイン型コンサルティング製造事業は派遣から帰ってきた技術者の活躍する場でもある」(同氏)。

FPGAの設計技術を生かし、MACHATROLINK関連の製品を展開

現在システックが最も力を入れているのが産業機器やロボット分野である。この分野に進出するきっかけも業界団体MACHATROLINK協会の課題・困り事を解決することだった。安川電機が推進するMECHATROLINKはロボットや産業機械を動かすためのフィールドネットワークの一つで、マシンコントローラ(PLC:programmable logic controller)とそれが制御する機械を繋ぐ通信規格である。パソコンが進化する中でマシンコントローラを使わずに、直接パソコンから産業機械を制御したいという要求が出てきていた。特に、中国や台湾ではこうした要求が非常に強い。システックは元々パソコンに映像を取り込み処理する技術を持っており、今後発展が期待できるロボット分野に進出するため自社製品として開発することに踏み切った。

こうして昨年開発されたのがパソコンから産業機械を直接制御できるPCI Express対応のMECHATROLINK Ⅲボードソリューション「SY-M3-01」である(図2)。XilinxのFPGA「SPARTAN-6」を搭載し、産業機械に組み込まれているMECHATROLINK ⅢのASICとパソコン間の通信制御を行う。開発の第二段が「SY-M3-03」である(図3)。このボードはAlteraのFPGAを販売するマクニカが開発したAltera社製「Cyclone V ST SoC」評価ボード「Mpression Sodia」向けのオプションボードである。Mpression Sodia にSY-M3-03を挿入することによってMECHATROLINK Ⅲ向けCyclone V ST SoCの開発環境を構築できる。このほかにも、ある米国半導体メーカーからCPUでMECHATROLINKを動かしたいとの要望を受けており、MACHATROLINK関連の事業は拡大する一方だ。

「モノとモノがつながり、一層大容量データ化するIoT時代、パソコンとIoTの機器をつなげられればビジネスは拡大する。その一歩としてMECHATROLINK関連の製品を展開し始めた段階だ。今後情報処理の一部はクラウドからIoT端末側に移るだろう。FPGAの設計ノウハウを基にクラウドと端末を補完する機能を提供していきたい」と、MECHATROLINK関連の製品を担当するシステックPLDソリューション部部長の西尾剛氏は同ビジネスに期待を寄せる。

図2 MECHATROLINK Ⅲボードソリューション「SY-M3-01」

図2●MECHATROLINK Ⅲボードソリューション「SY-M3-01」

図3 MECHATROLINK Ⅲボードソリューション「SY-M3-03」

図3●MECHATROLINK Ⅲボードソリューション「SY-M3-03」
左の小さいボードが「SY-M3-03」、右の大きいボードはマクニカの「Mpression Sodia」

日本の大手製造企業はグローバルな展開が不可欠となり、製造・開発拠点を海外へ移転してきた。そうした中で大手製造企業の下請けである中堅・中小企業の事業も変革を求められている。梶村氏は「中堅企業も自立しなければ生き残れない時代だ」と危機感をあらわにする。そうした中、システックの新たなビジネスモデルへの取り組みが、今後の中堅・中小企業の事業展開に一つの示唆を与える可能性がある。

(株)システック 会社概要/MECHATROLINK製品 説明資料

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