静岡県IoT活用研究会

中小企業向けIoTの啓発と導入支援 導入費用数万円の安価なツールとその導入方法を紹介(2)

オープンイノベーションへの取り組み

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スモールスタート、数万円レベルでIoT的なネットワークを構築可能

3番目に登壇したのが、ITコーディネータの叢雲堂代表取締役の池谷隆典氏である。同氏は「IT・IoTを活用した中小企業支援事例」と題して、IoT導入に当たって理解すべきこと、実際のIoTの導入事例、必要なツールについて説明した。

池谷氏がまず指摘したのがデータと情報の違いである。データとはセンサーから送られてくるもの(生の数値)であり、情報とはそのデータを人が理解できるように意味付けしたものであると定義した。そしてデータは情報に加工され、それが知識となり、人々の行動を決定する。そこを理解することの重要性を強調した。

次に池谷氏はIoTのキーワードとして「つながる」と「スモールスタート」を取り上げた。つながるという点ではLPWA(Low-Power Wide-Area)、特に無線局免許が不要なLPWA(アンライセンス系LPWA)がネットワークのボトルネックを解消し、IoTの普及を加速させるとした。LPWAとは消費電力を抑えて遠距離通信を実現する通信方式で、アンライセンス系LPWA は企業が工場内で自由に運用することができる。

スモールスタートでは、数万円レベルでIoT的なネットワークを構築できることを示した。例えば、顧客から注文を受けた製品の進捗状況を顧客に見える化するケースである(図3)。工程ごとにバーコードリーダーで工程票を読み取り、そのデータをWi-Fiモジュール搭載のRaspberry Piやルーターを経由してクラウドへ送り、製品の進捗状況を顧客と共有する。その際データを顧客にどこまで開示し、どこを隠すかが重要なポイントであると、池谷氏は指摘した。こうしたネットワークを構築するのに必要な最小単位の機器の費用は1万数千円程度で済むと言う。

図3●「Raspberry Pi」を利用した工程の見える化

図3●「Raspberry Pi」を利用した工程の見える化

さらに池谷氏はIoTの導入事例についても解説した。同氏はIoTの導入目的を、①生産・稼働管理、②品質管理、③在庫管理、④保守・運用管理の四つに分けた。①生産・稼働管理はいわゆる見える化で、四つの中で最も取り組み易く、導入費用も安く済む。一方、②品質管理は成果を出すには難易度が高くなる傾向にある、③在庫管理は全社的な取り組みとなり、一気通貫のシステムを構築するとなると数千万円オーダーの費用がかかる、④保守・運用管理はデータの取得が難しく、AIを導入するとなると難易度は一気に上がると言う。

導入事例は動画を使って解説した。最初に取り上げたのは愛知県の中小企業旭鉄工の例である。同社は自動車エンジン部品を製造しており、顧客からの増産要請に対してIoTを活用し、生産性を向上させることで対応した。旭鉄工は当初、市販システムの購入を検討した。しかし高額で導入するのは難しいと判断し、自前でシステムを製作することを決断した。秋葉原へ行き数百円のセンサー等の部品を購入、独自システムを構築した。それによって各工程の稼働状況を数値化し、ボトルネックを一つ一つ改善した。その結果稼働率は66%から80%に向上したと言う。このほか、トラックの出荷効率を30%向上させたネスレ日本の島田工場の例などが紹介された。

池谷氏はIoT事例を読み解く視点として「誰と誰のどんな困り事をどのように解決したのか」を挙げた。そのうえで、課題を解決するには人を中心に考え、人のネックを可視化することが重要であると説明した。最後に同氏は「まず一歩を踏み出さなければ始まらない。Let’s try IoT!!」と中小企業のIoT導入に対する決意を促し、講演を締めくくった。

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