実際医療分野に参入してみると、医療器具は少量多品種生産で職人のものづくりによって支えられていた。しかしその技術継承が難しく、日本の医療器具事業は衰退しつつあった。宇宙産業や産業用機械などで培った部品加工技術を使えば、そうした状況を打開できるのではないかと平垣氏は考えた。また同じ志で医療機器展示会に出展している仲間とも相談し、多様な技術面でサポートできる団体として、同氏は2015年に任意団体SPメディカルクラスター(協同組合の前身)を立ち上げた。
任意団体の立ち上げには静岡という地の利が生きた。静岡県は県主導でファルマバレー・プロジェクト(静岡県東部地域に医療健康産業クラスターを形成するプロジェクト)や浜松医科大学を中心とした浜松医工連携など医療機器産業の育成に積極的に取り組んでいる。しかも同県には、大手企業のサプライヤーとして、一つの技術に特化し技術を磨いてきた中堅企業が多い。平垣製作所もそうした企業の1社である。優れた技術を持つ企業を集めて連携できれば強力な組織を作れるはずだと考えて、平垣氏は任意団体SPメディカルクラスターを立ち上げた。
SPメディカルクラスター理事長で精密部品加工の平垣製作所代表取締役社長平垣徳之氏
協同組合SPメディカルクラスターへの移行には苦労もあった。気持ちはあっても現在のコア事業の確立に手一杯の企業も多く 当初の任意団体の参加メンバー10社のうち、まずは4社からスタートする事になった。「SPメディカルクラスターメンバーは同じ志を持つ仲間だと思っています。本音で話し合えなければ企業連携はできません。難しいのかも知れません。きれいごとだと言われるかも知れません。しかし、利害関係を乗り越えた付き合いができなければ協同組合は成り立たない」と、平垣氏は本音の付き合いの重要性を強調する。
目標は5年後に売上高3億円、参加企業20社
現在、SPメディカルクラスターの受注は順調である。「医療器具のものづくりには妥協は許されません。そのこだわりがブランドの確立につながります。ドイツ製の器具しか使わないと言っていた医師が、手に伝わるこのシックリ感がいいと言い、SPメディカルクラスター製の器具を使ってくれるようになりました。そのときはもの作りの人間として非常に喜びを感じました」と平垣氏は振り返る。
SPメディカルクラスターの当面の目標は、今後5年で売上高を3億円に増やし、参加企業を20社に拡大することだ。その目標を達成するには、メンバー各社が連携して製造する製品やメンバー各社の技術で対応できる製品へ拡大することが必要になる。現在は平垣製作所が営業窓口を担当している関係で切削加工製品が多くなっている。製品面だけでなく、営業・管理・システム・品質・調達など管理面の体制強化も必須である。製品の拡充、管理体制の強化には時間がかかる。平垣氏は「ここ1、2年がSPメディカルクラスターの発展を左右する勝負の年だ」と位置付けている。
(株)平垣製作所 会社説明動画(2分40秒)
SPメディカルクラスター 紹介動画(2分)
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