イズラシ

戻り止めナットから高強度・軽量のチタンナットまで製造

企業紹介

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我が国の基幹産業の一つである自動車。その自動車には、1台当たりで約3万点の部品が使用されるという。そういった自動車用部品でなくてはならないものの一つがナットだ。中でも、長期間の絶え間ない振動でも緩みにくい「戻り止めナット」の製造を得意とするのが、イズラシ(沼津市)である。

1939年創業の同社は当初、船舶などの修理や部品を手掛けていたが、大手自動車系列の部品メーカーとの取引を契機として自動車メーカー向けのナット製造が事業の主軸となり、現在に至る。各取引先を経由し、国内大手自動車メーカー全社への納入実績があるという(図1)。

図1●イズラシが自動車メーカーなどに向けて製造する各種ナットおよび関連部品

図1●イズラシが自動車メーカーなどに向けて製造する各種ナットおよび関連部品

戻り止めナットにも様々あるが、代表的なものは「ナイロンナット」と「S形ナット」である。ナイロンナットは、文字通りナットの一部にナイロンを固定させたナットで、そのナイロンによって、振動による緩みや戻りを防止する(図2)。S形ナットは上部の3カ所をカシメることによってナイロンナットと同様に緩みや戻りを防ぐ(図3)。

  • 図2●ナイロンナット

    図2●ナイロンナット

  • 図3●S形ナット

    図3●S形ナット

いずれも車体の足回り、具体的にはブレーキやサスペンション、ショックアブソーバーといった部品を車体に締結するために用いられることが多いという。現在市販されているクルマでは、一台当たり数十個程度の戻り止めナットが使用されているとみられる。

同社の強みの一つは、短納期でも臨機応変に対応が可能なことという。同社は検査や梱包などを行う本社工場のほかに、沼津市の南端にある戸田(へだ)に3つの工場を持っている。第一工場で冷間圧造、第二工場でタッピング(ねじ立て)、第三工場でNC切削加工をそれぞれ行っている(図4)。

図4●イズラシにおけるナットの製造工程と各工場の担当業務

図4●イズラシにおけるナットの製造工程と各工場の担当業務

いずれも最新鋭の設備を備えており、熟練した技術者による効率的な生産体制を実現しているため、「お客さまが希望される短納期での注文にも応じることが可能」(同社営業部 営業一課の 佐藤文男主査)である。

強みの二つ目は、「ナットスペシャル」(業務用語)と呼ぶ特注の部品の開発や製造が可能なことだ。同社製造本部製造技術課の辻竜治課長は、「車種によっては単一のモデルでしか採用されない特殊な戻り止めナットもあるが、当社では多品種少量生産にも短納期で対応できる」と自信を示す。

一般にはナットは汎用部品という印象が強いが、自動車産業では「車両開発の最終段階で所望の機能や設計を実現するために、特殊な仕様や形状のナットが必要となることが少なくない」(辻課長)という。

さらに、同社は三つ目の強みとして、ステンレスや非鉄金属素材の加工技術を挙げる。具体的には、鋼鉄以外の材料として、チタン、アルミニウム、真ちゅう、銅などによる部材の開発や製造が可能としている。

特に、チタンは鋼鉄と同等以上の強度を持つ一方、重さが鋼鉄の約半分で耐食性、耐熱性に富むという金属材料として優れた特性を持っているため、航空宇宙、医療など高耐久性や高信頼性が要求される用途を中心として需要がある。

その反面、チタン材の加工や部材製造には高い技術力やノウハウが必要となる。とくに、冷間圧造により大量生産が可能な企業は国内でも極わずかという。開発には困難が伴い、「初めて試作したときは2ショットで金型が壊れてしまい、製造部門に怒られてしまった」(辻課長)という。同社は何度かの試行錯誤を経て、1000MPa以上のねじ強度を持つチタンナットを冷間圧造で製造する独自技術の開発に成功している。

また、チタン材を使えば酸化皮膜により様々な色のナットにドレスアップできるため、「クルマや自動二輪車のカスタムパーツなどのセカンド市場向けや、マリン用途といった新しい市場も開拓していきたい」(佐藤主査)と、同社はチタン材の今後の用途開発に期待感を示している(図5)。

図5●冷間圧造性チタンナット

図5●冷間圧造性チタンナット

同社では、新入社員にまず教えるのは、上司や同僚を役職で呼ぶのではなく、名前に「さん」付けで呼ぶことだ。社内のコミュニケーションや、互いへの感謝の心を大事にしているという。また、社屋や工場の清掃についても徹底しており、社長も自らお客様用トイレの清掃を担当しているそうだ。職場を美しく、働き方改革を先取りしてきた社風が、良い品質の製品を生み出している。

(株)イズラシ 技術・製品資料

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